北里大学病院小児科

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入局・研修のご案内

留学記

北川 篤史

私の好きな言葉は、「人間万事塞翁が馬」です。振り返ると、医学部に入学したのも小児科医になったのも、北里大学に来たのも偶然でした。 同じように偶然、私はアメリカへの医学留学の機会を得て、2年間の研究生活を終えて帰国しました。 小児科医を目指す方、北里大学小児科へ入局をお考えの方、海外留学について知りたい方を対象として、私の拙い経験を書き示したいと思います。
まず、なぜ10年以上小児科の臨床しかしてこなかった私が、海外留学を考えたかについて述べます。私は医師になった時から臨床一筋であり、誰よりも多くの症例を経験したいと思っていました。 しかし多くの症例に対応するために、様々なガイドラインや教科書がありますが、満足した結果を得られないことも少なくありませんでした。 そこで私はもう一度基礎に立ち返って、新しい発想で新しい医学を創り出す必要性を感じたのです。
そんな時に偶然海外留学への機会を頂き、2018年4月から2020年3月までNew York州にあるNew York Medical College (NYMC)のDepartment of Pharmacologyで研究を行うこととなりました。 NYMCは海外の留学先として良く聞く有名な大学ではありませんが、リスや鹿などがいる郊外ののどかな地域にあり、人も皆とても親切でした。 大学にはインド、中国、台湾やイタリア、スペイン、ウクライナなど様々な国から研究者が来ており、皆独特の英語の発音をしていました。 私は留学前にSpecialなEnglishのTrainingをCompletelyしませんでしたが、Public SchoolのLectureでLearnした程度のJapanese EnglishでもNo Problemでした。 仕事は週休2日の平日9時から17時頃までで、疾患モデル動物を作ったり、心エコー、心臓カテーテルなどの動物実験を主に行っていました。 日常生活では時間的な余裕がかなりあったので、博物館に行ったりミュージカルを観たり、野球観戦をしたり家で手の込んだ料理を作ったりしていました。
海外留学のメリットは何と言っても、最先端の医学を研究し世界に発信できる環境が整っていることだと思います。 日本では日常業務が多忙であったり、様々なしがらみから臨床と研究を両立させることが困難な場合が多くあります。 研究のみに打ち込める時間が持てるということは大変貴重であり、留学した2年間のうちに多くの実験を行うことができました。 一方でデメリットが全くないわけではありません。一番のデメリットはお金の問題です。 留学先にもよると思いますが、New Yorkは家賃も物価も驚くほど高く、私も2年間で内緒にしていたヘソクリはほぼ底を尽きました。 しかし、子どもの学校の運動会や文化祭に参加したり、Manhattanで終電までお酒を飲んだり、最後はコロナウイルスの影響でNew Yorkが無茶苦茶なことになったり、 日本では決してできなかった様々なことが経験でき、お金に換えられないPricelessな時間を過ごすことができました。
まじめで退屈な話ばかり書きましたが、結論的に海外医学留学は医師としての人生の中で重要な転換点になり得ると考えます。そのような機会を与えてくれた北里大学小児科医局には非常に感謝しています。 最後に、この文章を読んで海外留学および北里大学小児科への入局に少しでも興味の湧いた皆様に、私の好きな言葉を贈りたいと思います。

「迷わず行けよ、行けば分かるさ」。

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本田 崇

2016年4月から2018年7月まで留学させていただいた本田崇です。こちらではDr. Redingtonの研究室でPost-doctoral Fellowとして基礎および臨床研究に従事しています。小児科ホームページへ寄稿する機会をいただきましたので、こちらでの留学生活を少し紹介させていただこうと思います。

シンシナティはアメリカ中部、オハイオ州の主要都市のひとつで、オハイオ川に面した風光明媚な場所です。日本ではあまり知られていませんが、シンシナティ小児病院はU.S. NewsのHospital Rankingでアメリカ国内の小児病院の中で第3位にランキングされており、街の人々はこの病院を誇りに思っているようです。実際に、私のいる14階建ての研究棟のほかに2つの大きな研究棟があり、非常に充実した設備のもと、多くの人々が研究に従事しています。臨床面に関しても、世界中から患者さんが受診され、最先端の診療が行われています。

研究室では「心筋虚血と炎症」をテーマにしたプロジェクトに携わっています。基礎研究にはこれまでほとんど携わったことがありませんでしたが、基礎的なウェスタンブロットやPCRをはじめ、さまざまな手技を習得し、今では多くのことができるようになりました。非常に興味深い結果も得られてきているので、最終的に1つの形にできればと思っています。同時に、新しい科学的知見を見出すことがこれほどまでに困難なことなのかと痛感しております。臨床研究に関しては、今まで日本で携わっていた先天性心疾患の血流解析に関する研究を行っています。留学当初はなかなかこちらの臨床医に取り合ってもらえない日々で非常に苦労をしましたが、ようやくプロジェクトが軌道に乗りはじめそうです。幸運にも臨床カンファレンスへの参加やカテーテル検査室への出入りも許可していただいており、アメリカでの小児循環器診療を学ぶ重要な機会となっています。

海外生活に関しては、留学当初は文化の違いに戸惑うことが多く非常に苦労し(どこが違うのか、表現するのはなかなか難しいのですが)、1年くらいかけてようやくこちらの生活に慣れました。このように文化の違いに何とか時間をかけて順応できたことは、われわれの家族にとっても人生の大きな糧になると思います。また、多くの日本人研究者の仲間ができたことも留学して非常によかったと思うことの1つです。同じように他大学の医局からいらしている似た境遇のドクターの方々はもちろん、薬学や生理学などの基礎研究者の方々とも仲良くしていただいています。いつも励ましあいながら、みなでがんばっています。

学生時代より海外留学にとても興味があり、多くの先生方にご協力いただいて挑戦することができました。いざ来てみると実際には思い通りにいかないことばかりです。しかしながら、留学してはじめて知りえたこともとても多く、こちらに来てよかったと思っています。最後になりましたが、快く海外留学の許可をくださいました医局員の先生方に、この場を借りて感謝申し上げます。

Dr. Redingtonのリサーチチーム

Dr. Redingtonのリサーチチーム

シンシナティ小児病院

シンシナティ小児病院

シンシナティ小児病院(研究所)

シンシナティ小児病院(研究所)

土岐 平

2018年4月から2020年1月まで国立精神・神経医療センター病院(NCNP)に国内留学させていただいていた土岐平です。 後期研修が終わり、急性期が苦手なんだと気が付いた私は、家族の気持ちを大事にしながら、あらゆる選択肢を時間をかけて「家族と決める」慢性期診療が中心である小児神経を専門にすることにしました。 その中で、何よりも「正確な診断」がその児と家族の生活・治療選択を決めると思いました。大学では急性期の神経疾患をみることが多かったのですが、 その事象が急性的な変化なのか、神経変性疾患による慢性的な疾患なのかは鑑別することに苦慮していました。 NCNPは小児神経疾患を幅広く勉強できると上司から教えていただき、NCNPに国内留学することを決めました。

NCNPはてんかん、精神運動発達遅滞を克服しようとしている病院です。そのため研究所は診断部門と治療部門に分かれ、病院はその理論を体現するために治験を組み、 全国から患者が集まった希少疾患の診断・治療・管理をし、指導をしております。私はその中で病院側に勤務しておりました。小児科ホームページへ寄稿する機会をいただきましたので、 こちらでの留学生活を紹介させていただこうと思います。

NCNPは東京都小平市にあり相模原から電車で1時間10分程度の場所にあります。この地区は、東京都立神経病院、東京都立府中療育センター、 島田療育センターはちおうじといった施設があり、小児神経医が充実した地域でもあります。レジデントの持ち回りで、検診も回り、行政・コメディカルと接する機会もあります。 子供の人口も多く、多くの患者さんが受診され、質の高い診療・医療が行われています。

病院では、「筋疾患とてんかん」をテーマにした治験に携わっていました。多くの臨床経過に基礎的な研究があり、まだ、発展途上であると感じました。 他に神経変性疾患や代謝異常症あるいは不随意運動症などを見ていました。 はじめは、小児の不随意運動って何?という状態でしたので苦労をしましたが、2年目のあたりではジストニアについて後方指摘研究を組ませていただきました。 小児神経の所見の取り方は独特ですが、1週間に1回、常勤医師の診察を見学できる機会があり、さまざまの手技を獲得し、今では多くのことができるようになりました。 また、勉強会も盛んで神経解剖・神経病理(英語)・てんかん勉強会・遺伝勉強会・電気生理所見会・筋病理所見会(英語)・症例検討会も毎日朝8時と夕方5時にあり、資料作りに追われていました。 資料を作っていたら、夜があけてしまいうことも多かったですが、研究所職員とも情報共有することができ、小児神経科診療を学ぶ重要な機会となりました。

生活に関しては、幼稚園や生活環境を変えたくないという妻の希望もあり、単身赴任をしました。週末に洗濯物を持って帰るという生活をしていました。 NCNPの敷地内は広く、夏には息子とカブト虫をとりに病院に行ったり、留学中に家族も増え、われわれの家族にとっても大事な2年間になりました。 また、多くの小児神経科の仲間ができたことも非常によかったと思うことの1つです。同じように他大学の医局からいらしている似た境遇のドクターの方々はもちろん、 研究所の基礎研究者の方々とも仲良くしていただき、いつも励ましあいながら、みなで頑張っていました。

小児科医の少ない中、多くの先生方にご協力いただいて国内留学に挑戦することができました 。NCNP診断部門・治療部門などの基礎系の先生たちとも勉強会で一緒になり、その中で遺伝も病理も「病歴」がもっとも大事になると言われました。 それは、北里大学で教えていただいたことと同じであり、遠回りではなかったのだな、と感じています。 最後になりましたが、快く留学の許可をくださいました先生方に、この場を借りて感謝申し上げます。

留学記 土岐 平 イメージ写真
北里大学病院 小児科〒252-0375 神奈川県相模原市南区北里 1-15-1
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